むかしむかし、北海道の深い森の中に、フキの葉の下に住む小さな、小さな人たちがおりました。彼らの名前は『コロポックル』。
とっても恥ずかしがり屋で、人間に姿を見せることはありません。でも、夜になると、人間のチセ(家)の窓辺に、山盛りの魚や、おいしい山菜を、そっと置いていってくれるのです。
人間たちは、姿の見えない彼らに、とても感謝していました。
『どんな姿をしているんだろう? 一度だけでいいから、お礼を言いたい。』
人間たちは、コロポックルの姿を見たいと願うようになりました。
ある夜、好奇心旺盛な若者が、チセの窓辺に隠れて待つことにしました。
『今夜こそ、その姿を見てやるぞ。』
月が昇り、森が静まり返った頃……。(間を置く)
カサリ。窓から小さな手が、魚の入ったカゴを差し入れました。その瞬間です!
『つかまえた!』
若者は、その小さな手をぎゅっと掴みました。『アッ!』驚いたコロポックルが振り返りました。
それは、それは美しい、小さな女性でした。でも、彼女の目は、驚きと、そして深い悲しみで満ちていました。コロポックルは、人に姿を見られることを、何よりも嫌っていたのです。
コロポックルは悲しげに若者を見つめ、『どうして……、どうしてこのようなことを……。』と、涙を流しながら、若者の手を振り切って、霧の中へ消えていきました。
それ以来、コロポックルは二度と、人間の前に現れることはありませんでした。
森には、ただ巨大なフキの葉が、静かに風に揺れているだけでした。
(静かに)……おしまい。