むかし、むかし、あるところに、 正直者の きこりの おじいさんが おりました。 おじいさんは 毎日まいにち、 山おくで いっしょうけんめいに 木を 切って 暮らしておりました。 ある日のこと、 泉のそばで 木を 切っていると…… つるっ! おじいさんの 手から、 大切な 斧が すべり落ちて 泉の 中に 「ドボーン!」と 落ちて しまいました。 おじいさん: 「ああ……困った、困った。 あの斧が なければ 仕事が できないのに……。 どうしたもんじゃろう。」 おじいさんは 泉の ふちに しゃがみこんで、 じっと 水の中を のぞきました。 けれども、 深い泉の 底は まっくらで、 斧の すがたは どこにも 見えません。
すると どうでしょう。 泉の水が キラキラ キラキラと 光りはじめました。 まぶしい 光の中から、 水の神様が ふわりと 現れました。 水の神様は それはそれは 美しいお方で、 白い衣を まとい、 右の手に キラキラ光る 金の斧、 左の手に ピカピカ光る 銀の斧を 持っておられました。 水の神様: 「きこりよ、 おまえが 落としたのは この 金の斧か?」 おじいさんは びっくりしましたが、 正直に こう 答えました。 おじいさん: 「いいえ、いいえ。 そんな りっぱな 斧は 私のでは ございません。」 水の神様: 「では、 この 銀の斧か?」 おじいさん: 「いいえ、 それも 私のでは ございません。 私が 落としたのは、 古い 古い 鉄の斧で ございます。」
それを 聞いた 水の神様は、 にっこりと ほほえんで こう おっしゃいました。 水の神様: 「なんと 正直な きこりじゃ。 うそをつかない おまえが 気に入った。 ほうびに この金の斧も、 銀の斧も、 おまえの 鉄の斧も、 ぜんぶ おまえに あげよう。」 おじいさん: 「え……! そんな、 もったいのう ございます。 ほんとうに よろしいのですか?」 水の神様: 「正直に 生きる者には、 よいことが あるものじゃ。 大切に 使いなさい。」 おじいさんは 涙を ぽろぽろ 流しながら、 何度も 何度も お辞儀を しました。 おじいさん: 「ありがとうございます。 ありがとうございます。 一生 大切に いたします。」 三本の 斧を 大切に かかえて、 おじいさんは 喜びいっぱいで 家に 帰りました。
さて、 この話を 聞いた 村の 欲張りな きこりが おりました。 欲張りなきこり: 「ほほう、 泉に 斧を 落とせば 金の斧が もらえるのか。 よし、 おれも やってみよう。」 欲張りな きこりは、 泉に わざと 自分の 斧を 「えいっ!」と 投げ込みました。 すると やはり 泉が光り、 水の神様が 現れました。 水の神様: 「おまえが 落としたのは この 金の斧か?」 欲張りなきこり: 「そうです、 そうです! それが 私の 斧です!」 水の神様の お顔が みるみる きびしく なりました。 水の神様: 「嘘つきめ。 嘘をつく者には なにも あげるものは ない。 おまえの 斧も 返さぬぞ。」 水の神様は そう おっしゃると、 金の斧も 銀の斧も 持ったまま 泉の中に 消えて しまいました。 欲張りな きこりは、 自分の 斧まで 失って、 泣きながら 帰りました。 正直に 生きることは、 何より 大切な ことなのですね。 めでたし、めでたし。